■原告
■D’
■E’
E’1,E ’2,E’3,E’4及びE’5が,亡Fについては,F’がそれぞれ訴訟承 継した。
)として,被告らに対し,被告国が中国人労働者を日本国内に移入す る政策を決定し,被告会社とともに本件被害者らを過酷な条件の下で強制労働 に従事させたものであるから,被告らの行為について不法行為又は安全配慮義 務違反が成立するなどと主張して,謝罪広告の掲載及び損害賠償を請求した事 案である。
- 2 - なお,本件被害者らは,被告らの行為があった当時,中国国籍を有してい たものであるが,本件は,強制連行を含めて本件被害者らが日本国の領土内 に入ってからの被告らの行為を損害賠償請求権の発生の根拠とするものであ るところ,当時の法例(明治31年法律第10号)によれば,不法行為等に よる法定債権の成立及び効力については,その原因である事実の発生した地 の法律によることになり(法例11条1項),また,法律行為の成立及び効 力については,当事者の意思に従い,いずれの国の法律によるべきかを定め (法例7条1項),当事者の意思が明らかでないときは,行為地法によると 定められているから(法例7条2項),弁論の全趣旨も考慮すれば,本件に おいて適用される法律(私法)は,当時の日本の民法である。
2 原告らの主張の概要 (1) 前提となる事実関係 原告らが主張する前提となる事実関係は,別紙3「原告ら主張の事実関 係」記載のとおりである。
(2) 被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求 被告らが本件被害者らの強制労働を目的として強制連行し,強制労働に従 事させたことは,被告国の国策に基づき,被告らが形式的にも実質的にも共 同し一体となって推し進めたことであるから,被告らは,?「陸戦ノ法規慣 例ニ関スル条約」(以下「ヘーグ陸戦条約」という。
)違反,?ILO第2 9号「強制労働ニ関スル条約」(以下「強制労働条約」という。
)違反,? 国際慣習法違反により,民法上の共同不法行為責任を負う。
(3) 被告国に対するヘーグ陸戦条約3条に基づく損害賠償請求 ヘーグ陸戦条約3条は,同条約違反行為により被害を受けた個人が交戦当 事者に対して直接損害賠償請求権を行使することができることを定めたもの であり,被告国の行為がヘーグ陸戦条約の諸規定に違反するものである以上, 原告らは,同条約3条に基づき被告国に対して損害賠償請求権を有する。
- 3 - (4) 被告国に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求 本件被害者らが強制労働に従事中,食事,衣服,宿舎のすべての面におい て,劣悪な労働環境におかれ,約8か月で中国人労働者全体の10%に死者 が出たり,多数の呼吸器疾患,栄養失調の疾病が出るほどの状況にあったに もかかわらず,被告国は,日本港運業会や被告会社に対し,何らの是正措置 を求めたりすることなく,また,自ら是正する行為も行わず,本件被害者ら を生きていくことすらできない困難な状態に放置したものであるから,安全 配慮義務違反の責任を負う。
(5) 被告会社に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求 本件被害者らは,被告会社の下で,いつ死んでもおかしくないような栄養 不良状態におかれ,飢餓感にさいなまれる苦痛や,いつ過労死してもおかし くないような過酷で休みのない長時間労働を強いられるという苦痛,また, 入浴等もない耐え難く不衛生で,かつ,暖房設備にも乏しく凍死しかねない ほど寒い状況下で暮らす苦痛を余儀なくされ,怪我や病気になっても医師に よる治療や投薬も受けられなかったものであるから,被告会社は,安全配慮 義務違反の責任を負う。
(6) 本件被害者らの損害 本件被害者らの被害の大きさ及び被害の質の特殊性からすれば,被告らは, 謝罪広告の掲載により,原告らに誠意ある謝罪を行い,本件被害者らの苦痛 に対する慰謝の措置を講ずるとともに,本件被害者らに対して,慰謝料とし て2000万円,弁護士費用として500万円の合計2500万円の損害を 賠償すべきである。
3 被告国の主張の概要 (1) 不法行為に基づく損害賠償請求について ア国家無答責の法理 原告らの主張する損害は,国家の権力的作用によるものであって,かか - 4 - る損害については,国家賠償法(以下「国賠法」という。
)施行前におい ては,国が損害賠償責任を負うことはなかった(国家無答責の法理)。
したがって,被告国に対する不法行為に基づく原告らの請求は,請求権 の発生を根拠づける実体法の規定を欠くものであって,それ自体失当であ る。
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イ除斥期間の経過 本件では,原告らの主張に係る加害行為から本件訴訟提起までに既に2 0年が経過しているから,民法724条後段の除斥期間の経過により,原 告らの損害賠償請求権は法律上当然に消滅している。
(2) ヘーグ陸戦条約3条に基づく損害賠償請求について 個人の国際法主体性の要件有無の観点から,ヘーグ陸戦条約は個人に加害 国に対する損害賠償請求権を認めたものとは解釈できない上,ヘーグ陸戦条 約の文脈,趣旨・目的や起草過程を考慮しても,ヘーグ陸戦条約3条が,個 人に損害賠償請求権を認めたものと解することはできない。
(3) 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求について ア安全配慮義務が存在しないこと 安全配慮義務の成立の前提となる「ある法律関係に基づく特別の社会的 接触」は,当事者間に雇用契約ないしこれに準ずる法律関係が存在し,か つ,これに基づき直接具体的な労務の支配管理性が存在する場合のことを いうものと解される。
しかし,原告らは,一方的に強制連行されたと主張しているのであるか ら,原告らが主張する事実によっても,被告国と本件被害者らとの間に 「雇用契約ないしこれに準ずる法律関係」があるとも,「直接具体的な労 務の支配管理性が存在する法律関係」があるとも認められない。
イ消滅時効の援用 仮に,原告らが,被告国に対し,民法415条に基づく損害賠償請求権 - 5 - を有するとしても,原告らの本件訴訟提起は,権利を行使することができ る時から10年を経過してなされたものであることは明らかであり(民法 166条1項,167条1項),消滅時効を援用する。
(4) 日華平和条約及び日中共同声明等 本件のようないわゆる強制連行問題も含め,第二次世界大戦に係る賠償並 びに財産及び請求権の問題については,日本国との平和条約(以下「サン・ フランシスコ平和条約」という。
),その他の二国間の平和条約及びその他 関連する条約等に従って被告国が誠実に対応し,これらの条約等の当事者と の間では法的に解決済みであり,本件についても,日本国と中華民国との間 の平和条約(以下「日華平和条約」という。
)11条及びサン・フランシス コ平和条約14条(b)により,中国国民の日本国及びその国民に対する請 求権は国によって放棄されており,日本国政府と中華人民共和国政府の共同 声明(以下「日中共同声明」という。
)5項においてもその放棄が宣言され ているのであるから,原告らの請求に応ずる被告国の法律上の義務は消滅し ている。
4 被告会社の主張の概要 (1) 前提となる事実関係 被告会社が主張する前提となる事実関係は,別紙4「被告会社主張の事実 関係」記載のとおりである。
(2) 不法行為に基づく損害賠償請求について ア不法行為が存在しないこと 戦時中の酒田港での中国人労働者が従事した作業は,当時の日本人労働 者,あるいは,当時の婦人や学生などの勤労奉仕隊の作業員が従事してい た作業と比較しても,危険度においても高度な危険を有する作業はなく, また,負担においても大きな負担となる作業もなかった。
また,中国人労働者の作業内容は被告国の方針によっておのずと定まり, - 6 - 被告会社には作業内容を決定する権利や作業内容を変更する権利はなかっ た。
中国人労働者がかなりの人数死亡したことについては,中国人労働者が 日本国内に入国するまでに受けた虐待や劣悪な生活環境とそれによるダメ ージが原因であり,被告会社が原告らに損害賠償責任を負うことはない。
イ消滅時効の援用・除斥期間の経過 被告会社は,本件被害者らが,損害及び加害者を知った時から3年以上 が経過していることにより,民法724条前段の消滅時効を援用する。
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